2014年04月01日

先輩病理医、平和運動家、推理作家、土山秀夫先生のお話

核廃絶へのメッセージ(土山秀夫著).pdf
あてどなき脱出(土英雄著).pdf
みなさんにちょっとお知らせです。堤@病理医@JPP団長です。

 JPPとも音楽とも少し遠い話ですが、みなさんにぜひお知らせしたい。
 みなさん、もと長崎大病理教授で、医学部長と学長もされた土山秀夫先生をご存じでしょうか?
 現在88歳で、長崎市内にお住まいです。すばらしいご活躍をされています。
 その活躍にこころから感動しましたので、ここにお知らせします。

 土山先生は、私が若かりしころ、とても優しい白髪紳士の教授で驚いた経験が今でも新鮮です。いかにも教授然としたわが恩師、故影山圭三先生との違いにいささか驚きました。副腎病理が専門です。
 定年後(1990年以降)は、反核、反戦運動の中心人物になっています。長崎ではなくてはならないブレインです。長崎市長が8/9に話す原稿の下書きもされているようです。国や委員会でも活発に提言され続けています。つい先日も、ケネディーアメリカ大使と面談されたそうです。

 「核廃絶へのメッセージ、被爆地の一角から」(土山秀夫)、平和文庫、日本ブックエース(2011)
は本当にすばらしい内容の本です。

 もう一つ、土山先生は病理に入局してしばらくして(1956年〜)、推理小説を土英雄のペンネームでたくさん発表され、江戸川乱歩氏に激賞されたそうです。それ以前の医学生時代から物書きだったようです。最近、未発表の1975年の作品(病理医が主人公)を40年ぶりに出版され、現在、長崎のベストセラーになっているそうです。読ませていただきましたが、本当に面白い!

 「あてどなき脱出」(土山秀夫推理小説集)、土英雄(ペンネーム)、長崎文献社(2012)
 満州の731部隊で働いていたドイツ語が得意な副腎専門の若き病理医がナチ支配下のアウシュビッツに出張し、ユダヤ人女性科学者と恋に落ち、堅牢なアウシュビッツから脱出する物語です。ぜひ、若手の病理医に読んでほしいです。
 第二部として、すでに発表されていた4つの短編も収録されています。いずれも病理医が主役です。

 土山先生は原爆投下のとき、長崎医科大学の2年生でした。木造校舎で夏休みなく勉強していた医科1,2年生と看護学生は全員死亡となっています。3,4年生の一部は病院のコンクリートのおかげで助かっています。土山先生はたまたま、「母危篤」の方を受けて、当日朝7時前の列車に乗って佐賀の実家に帰り、助かりました。お母さまは糖尿病性昏睡を脱して元気になられたようです。まるでドラマのような話です。私は、現長崎大の先生から「実は原爆当日授業をサボっていて、あとで教授になった先生がいる」という噂を聞いていましたので、しばらくの間少し誤解してました(笑)。10日には廃墟の長崎に戻り、救助活動に参加したそうです。一緒に行動したお兄さんは、残留放射線による急性放射線障害になったそうです。におい(死臭)が忘れられないと−−。

 土山先生は、戦後、ようやく復興した長崎大学を1952年に卒業しています。多くの学生仲間を失い、医学部長をはじめとする多くの恩師をなくし、校舎もなくなった大学の貴重な卒業生です。かの永井隆先生(被爆した放射線科教授でCML患者、長崎市名誉市民)にも教わったそうです。江戸川乱歩氏の強力な推薦にもかかわらず、推理小説家でなく病理医の道を選んだ土山先生は、現在、長崎になくてはならない現役の反核運動家(平和活動家)です。

 先生は、推理小説と病理診断の共通性をつねづね強調されています。
 若き病理医の刺激になると信じて疑いません。ぜひ知ってほしい、すごい先輩医師です。

 ぜひ、この2冊の本を読んでみてください。

2014年4月1日(火)(うそでない、本当の話です)

堤寛 Yutaka Tsutsumi
JPP団長
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2014年02月26日

音楽エッセイ6:トロンボーン吹きのグチ









トロンボーン吹きのグチ


私は20年来、オーボエというダブルリード楽器を練習している。前任地および現在の藤田保健衛生大学で学生オーケストラに加えてもらっている。「ブラ1」(ブラームス交響曲第一番の略)は2回ほど演奏させてもらった曲だ。オーボエソロが多いので、オーボエ吹きにとっては「おいしい」曲である。この名曲にまつわる“裏話”を披露しよう。


 まず、オーケストレーションの話。オーボエに限らず、他の木管楽器でも、ソロの直前は一小節程度の休みをくれていることがうれしい。作曲者ヨハネス・ブラームス氏の何というやさしい気遣い!きっと、しっかりやれよという叱咤激励なのだろう。一方、同時に演奏したジャン・シベリウス作曲の組曲「カレリア」では、休符がなく最低音を吹きっぱなしの長いパッセージのあと、いきなりのソロがオーボエに課されている。プロのオーボイストに聞くと、「まともにやっちゃダメ」というごもっともなアドバイスだった。


 つぎは、トロンボーン吹きのグチ。ブラームスの生きた百年以上前のトロンボーンは性能が悪かったのだろう。とにかく、この曲でトロンボーンが登場するのは第四楽章の後半である。しかもいきなりのソロだ。三本のトロンボーンのアンサンブルはとても美しく、聴かせどころなのだが、木管楽器奏者からすると、何ともかわいそうに思える。たとえば、第一楽章のでだし(序奏)のフォルテではホルンが大きく響くが、トロンボーンがあった方がもっと厚みがでる気がするのは私だけだろうか。トロンボーンは、ベートーベンの第五交響曲「運命」の第四楽章で始めて交響曲に使われるようになったそうだ。ベートーベンを師(目標)とするブラームス(バッハ、ベートーベン、ブラームスはドイツの3Bと称される)だけあって、トロンボーンの使い方も見習ったのだろう。プロのトロンボーン吹きにとっては、ちょっと出演しただけで、バイオリンやオーボエと同じだけの金を稼げる「おいしい」曲ともいえそうだ。


 もう一つ、アントニン・ドボルザーク作曲の交響曲第9番「新世界より」の裏話から。聴く人にとってとても聴き心地がよいこの曲は、楽器演奏の立場からは割と悩みが多い。第一楽章でフルートが2回吹くソロのメロディーが1回目と2回目で調が半音違うこと。第二楽章の最後でコントラバスだけで和音を弾くこと。第三楽章の最後でビオラの刻む音符が1小節に6つ、5つ、4つ、3つと減ってゆくこと。極めつけは、チューバの出番が静かな第二楽章に二度でてくるだけで、他楽章のフォルテシモの盛り上がりでもただ指をくわえて(?)聴いているだけなこと。シンバルも第四楽章の前半で一発だけ登場し、しかも拍子はずれの部分で「弱く」と指定されていること。ドボルザーク氏がチューバとシンバルに「いじわるな」こんな譜面をどうして書いたのかは謎のままである。


(堤 寛)


 


 


 

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音楽エッセイ5:管楽器の名手の性格









管楽器の名手の性格


 芥川龍太郎の三男である作曲家、芥川也寸志氏(19251989)いわく、管楽器の性格と吹き手(名手に限る)の性格には相関関係がある。


 フルートの名手は物事を常識的に判断する。突拍子もないことを言い出す人はフルートがうまくならない。そしてフルートの名手はみな白髪だそうな。


 デリケートな楽器であるオーボエの奏者はみな神経質、チンドン屋の吹くクラリネットはユーモリストが多い。すっとぼけた音の出るファゴットはすっとぼけた人がうまい。ホルンは理屈っぽい。ホルンという楽器がF管で、いつも移調して吹いているせいらしい。トランペット吹きは長命だそうだ。


(堤 寛)


 

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